Diary of 5/31-
Return in the rain

K2 from BCK2

K2 高所キャンプの標高
 K2BC 4,980m
 K2C2 6,342m
 K2C3 6,894m

 

7/16 @K2BC



ABC南南東リブルート取り付き03:00 起床。4時に出発
05:00 K2の取り付きに到着。天気がいい。快調だ。

 C1の手前に、少し斜度が緩くなっている場所がある。K2 slopeルート下部を振り返る
休むのには格好の場所だが、元気なのでやり過ごしてしまった。
 これは失敗だった。この上には、こんな場所はないのだ。


08:00 C1の横を通り過ぎる。そのまま休みなしで登っていく。
 暑い。喉が渇く。

 ミックスの登りが時々現れる。かなりの急坂が続く。休む場所がない。
 C2の手前は厳しい勾配だった。運んできたタンクがずっしりくる。重みで疲れた。それ以上に喉が渇いた。

rainbows沢山の虹とブロードピーク12:00 C2に到着。強い日射しの中、沢山の虹が出ていた。丸い虹と白い虹、歪んだ虹。いろいろな虹が重なっている。

 綺麗で、現実感から遠い景色だった。another rainbows歪んだ虹

 テントで休む。まず、米を少しと味噌汁をお腹に入れる。

 アレックは、BCで調子を整えて、遂にここまで登ることができた。彼は、ここが俺の頂上だと言っていた。ここで下りるようだ。


 ボルちゃんがC2に到着。ラトビア人のおじさんだが、彼とテントをシェアする。彼は疲れ切っていたので、お湯を沸かして飲ませる。彼の水筒にもお湯をつくった。雪を集めて、夕食のお湯もわかす。
 そう、彼は何もしないおじさんなのだ。愛されキャラではあるのだが...

 そして、意味不明の話が長い。早々に寝るに限る。

17:30 就寝

7/17 @K2C2(6,342m)



05:00 起床。7時に出発。今日はC3へ登る。

 少しミックスが混じったトラバース帯を抜けると、長い急登となった。いけどもいけども登りが続く。さすがにこの高度だと空気の薄さがこたえる。




12:00 C3に着く。眺めのよいところだ。

 Mission#2。開放感の中で完了。ふー。

16:30 就寝。夜が更けると、足元が冷たくなってきた。一枚、二枚と靴下を重ね着しては、また寝る。顔には露が垂れてくる。それでも、12時間近く寝ることができた。

7/18 @K2C3(6,894m)



godwinaustine gracierゴドウィンオースティン氷河04:00 起床。5時の予定だったが、雪が降り出したので早起きをする。朝食は、紅茶とチョコ。これで十分だ。

05:00 下降開始。順調に下りていく。いやらしいMix帯だ。
07:00 C2を通過。前回より雪が締まっていて、歩きやすい。

 ずっとアームラップで降りてきたが、手袋が熱をもっている。
 気付くと、摩擦で小さな穴が開いていた。えー、出発前にわざわざ丈夫な手袋を買ってきたのに...この牛皮、弱い!

 取り付きの手前で、シェルパのパサンが長い時間、休んでいた。落石に当たったらしい。この頃、何人かのシェルパが、落石で小さな怪我をしている。
 パサンの怪我も大事ではなくてよかった。
 
10:00 取り付き着。

11:00 K2BC着 今日は、ゆっくりするだけだ。

 今日は、コーラ売りが来ていた。大体、1000-1500 RPでコーラやマウンテンデューの1.5Lを売る。村から運ぶ距離を考えるとこの値段は有難い。
 私も二週間に一度くらいは買っていたが、毎回買う人もいる。大人気だ。

 C3から下りてくると、空気が濃い。よく眠れそうだ。
 次の登山は、遂に、サミットプッシュ。山頂まで行く。準備は終わった。後は、天気待ちだ。

20:45 就寝

7/19 @K2BC



06:45 起床。疲労感がある。空気が濃いので、疲れが出たのだろう。
 喉がいがらっぽい。C2まで、喉が渇いたまま登ったせいだ。

 ギャレットの隊は、C3タッチに行ってきた。
 一緒に登ったゆきちゃんは、C2で寝ていたときに、こぶし大の石が落ちてきてテントを突き破り、首筋を打ったそうだ。恐ろしい!
 大事には至らなかったが、そのまま下りてきたらしい。
 アブルツィールートでは、我々のルート以上に、落石が多く発生しているようだ。

 この日、コンコルディア方面は霧の中だった。チョゴリザも見えない。
 やがて、霧がゆっくりK2BCへ上がってくる。そろそろ干し物をとりこまなくては。

 ずっと、帰るか帰らないか迷っていたアレックとブルックは、帰らないことにしたようだ。

20:20 就寝。SPO2は、80%/58bpm。安定しまくりだ。

7/20 @K2BC



white morning 夜中にぱらついていた雨が雪になった。霧と雪で真っ白な朝だ。

10:40 ブロードピークで中規模の雪崩が発生。C1の下あたりで発生し、そのままコースに沿って下ったらしい。多くのメンバーが雪をかぶった。
 K2BCからは、双眼鏡で良く見える場所だ。流された人同士で助けあっている。

 その後、小さい雪崩が数回起こった。固定ロープで助かっているようだ。

 この雪崩で、一名のパキスタン人が行方不明。ルートから外れて、別の谷に押し流されたらしい。
 それから一名の中国人が軽傷。そして日本人のSさんが重症。足の骨を折ったらしい。

 行方不明の捜索に、我々の隊のパキスタン人も出動していった。

 うーん、今日は雪崩日和というのは、わかっているはず。なぜ、突っ込むのだろう。
 ブロードピークでも、セブンサミットのチームは、やらかしているなぁ。

7/21 @K2BC




7:00 起床。うす曇りの天気だ。山を見ると6,000mくらいから上には雲がかかっている。
9:00 日が差す。すぐに日差しは厳しくなった。


meeting ラッセルが無線でやりとりをして、昨日の日本人のSさんの状況を聞く。彼女は以前この隊にも参加しており、特に縁がある人なのだ。

 今、彼女は、ブロードピークの取りつきのテントに一人で収容されて、医者が付き添っているらしい。昨日からヘリを待っているがいつ来るかわからない。
 無線でも状況ははっきりしなかったが、我々の判断でヘルプに行くことにした。

13:00 我々のドクターが、彼女のテントに着いて、直ぐに無線連絡がきた。追加で、エアチューブ、SAM等を持って、追加部隊が向かう。

 足首の骨折だが骨が二本、両脇から露出しているらしい。背中も強く打っている。

 大きなテントを建て、手術室とした。足首を引っ張り、露出した骨を戻し仮止めする。大手術だ。途中で肩の脱臼も発見した。

 手術は成功したが、あくまでも仮の手当てだ。足首の切断が必要になるかもしれない。早くヘリがこないと、状況は悪くなる。我々のリエゾンも軍に連絡して、ヘリが飛ぶように要請をかけた。ネパール人のメンバーは、このくらいの雲なら、ヘリは飛べよって、怒っていた。


 ブルックはサンフランシスコの消防士だ。今回の手当てで、とても活躍をした。しばらく元気がなかったが、この日から大分元気になったようだ。

 事故の後も、セブンサミットチームは動きが悪い。ヘルプもかけてこない。我々が押しかけて良かったようだ。

7/22 @K2BC



7:00 暑くて起きる。

 ゆきちゃんの調子が悪いらしい。口内炎が治らないので抗生物質の投与を受けていたが、今度は、腫れがひどくなってきたらしい。
 昨晩、ギャレットの隊のドクターにストップをかけられた。そこで、直ぐに病院に行くようにヘリに乗ることになった。元気で素敵なキャラなのに残念です。

 この日、ブロードピークのSさんはヘリに乗ることができた。後日、イスラマバードの病院で手術をして、足の切断はせずにすんだと聞いた。よかった。

 ゆきちゃんは、もう次の日のヘリとなった。彼女はスカルドの病院に入院し、我々がスカルドへ戻る少し前に無事、退院したそうだ。

replatform 午後にまた、リプラットフォームをした。
 テントを張るのに適当な場所も、だんだんなくなってくるので、今回は砂利の山を崩して埋め立てをする大規模な工事だった。慣れた作業だが、だんだん大変になってくる。


 夕食後はおしゃべりだ。最近、日本人同士が話すとめしの話になることが多い。寿司とかうなぎとか、今、食べたいものが話題になる。豚肉がないパキスタンなので、とんかつも想像してしまう。外人は、朝飯にベーコンがないのが、寂しいらしい。
 めしの話がで盛り上がるのは、退屈してきた証拠だな。

20:30 就寝。少し雨がぱらついてきた。
 雪崩の音も近い。いつまでも途切れない電車のような音だ。

7/23 @K2BC



7:30 起床。うすぐもりだが暑い。30℃だ。

 マイクが頂上アタックに出発した。このタイミングだと、帰りに悪天候にぶつかりそうだが、それでも早期の決着を望んだらしい。我々の参考にもなる。

 この日の午前中にGlobal Rescueという救助保険の更新をした。出発前に忘れていたのだが、7月末で切れてしまうのに更新をしていなかったのだ。幸いこの日は衛星電話が直ぐ繋がったので、電話で済ますことができた。いやあ、これは便利だ。


guest ブロードピークからまたお客さんがきた。今度は三人組の個人のグループだが、ニュージーランド人が一人、転倒して頭を切ったらしい。


 5cm程の切り傷だが、かなり深い。ただ、血はほとんど止まってcut of guest
いた。ドクターがその場で縫合手術をする。30分ほどかかった。
 怪我をした人は、比較的元気だが、付き添ってきたメンバーのほうが、血をみてショックを受けていた。


smile of guest ドクターは、2-3日様子をみて、出血がなく、気分も悪くなければ、また登っていいよと声をかけたが、付き添いのメンバーは、よく考えてみますと答えていた。

 ここは空が開けていて、星がよく見える。アンタレスが赤いのもよくわかる。
 いずこも変わらぬ夏の星空。

7/24 @K2BC



この日が運命の日だった。

k2 BC8:00 K2BCから、C3の様子を双眼鏡で覗く。
 マイク達は、C3で出発の支度をしたまま、ずっと動かずに何かを話していた。一人、C3から登って行き、10分ほどで引き返してきた。
 しばらくして、マイク達が全員、下山を始めた。



15:00 マイク達がK2BCまで戻ってきたので、皆で状況を聞く K2 C3 and shoulderK2 C3 and shoulder
ことにした。

・C3から上は、雪が深く、しかもスポンジ状に柔らかいので、前に進めない。体が1mくらい埋まってしまう。

・C1~C2も、状況が悪くなっている、一度、雪が解けて再凍結し、一面のブルーアイスとなった。ロープも氷の中に埋まっている。



 熱波のせいで、雪がぐしゃぐしゃになっていた。我々がC3に登った時とは全く違う状況だ。
 今後、登れるようになるには、雪が解けきるか、逆に雪が厚く積もった上でしっかり締まるか、どちらにせよ今から大きく変化しなければならない。そんなことはあるのだろうか。

 しかも、南の方からは、ゆっくりとモンスーンが迫ってきているらしい。普通は8月末くらいにくるはずだ。一か月くらい、早いんじゃないか?


 この日、アブルッツィールートでは、小さな雪崩があった。登攀具等を仮置きしていたテントが埋まったそうだ。これは災難だ。

 続いて、ギャレット達のシェルパが落石で腕を折った。70-80cmのサイズの落石だったというから、かなり大きい。またヘリのリクエストになる。

 アブルッツィールートでも、ルートが崩れ始めている。

 この日は、結論は出なかった。

7/25 @K2BC



怪我をしたシェルパの運搬怪我をしたシェルパの運搬 午前中にデビットがヘリで帰った。昨日の状況を聞いて、もう無理だと判断したらしい。さすがの素早い判断だ。
 怪我をしたシェルパも運ばれた。

 我々もK2が登れないというのは分かった。

 C3のテントの中には、機材やダウンスーツのような個人装備が残っている。隊としては、酸素タンクも500万円分くらい残したままだ。
 しかし、この落石の嵐の中、装備のために登ることはできない。すべて、あきらめることにした。

 しかし、このままではもったいないので、帰る前にブロードピークに挑戦することになった。
 いたちの最後っ屁みたいなものか?

 但し、条件としては、悪天候が迫っているので、悪くなったら、直ぐ下りる。
 K2C3に残したので、ロープはない。 先発隊はなく、皆で一緒にのぼる。という、ないないづくしの登山だ。

 これは、ほとんど諦めてるような登山だが、チャンスには後ろ髪はない。喜んで、参加することにする。

 しかも、明日、出発だ。はやっ!