Diary of 6/24-
summit and climb down

High campHigh camp

6/24/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)


 7:30 起床。少しぐずぐずしていたら、7時起きが7時半になった。high campは普通に寒い。テント内でも-20℃位だろう。

トラバース ルートトラバース ルート 9:00 出発。まずはデナリパスまでの長いトラバースルートを登り始める。
 ここはrunning belayをして安全を確保しながら進んでいくのだが、滑落事故が多いことでも知られている。しかし、この日は、雪がそれほど硬くなく、急なトラバースもあまり怖くなかった。
ただ怖がりのデボラは、少しのスリップで、何度も動けなくなってしまい、移動に時間がかかっていた。

 12:30 デナリパスにつくと、これまで遮られていた風の道が開けて、一気に強風が吹き込んできた。日本的に言えば風速15msくらいで、飛ばされる手前くらいの風だ。雪が顔に当たり痛い。また、ここにきて、サブガイドのネイトの調子が悪いらしい。腹痛がするそうだ。うずくまっている。
 我々はそこからcampに撤退することにした。

 14:00 high campに戻る。テントでリフレッシュの昼寝をした。

 夜食はマカロニ&チーズだ。昼飯が乏しいので、沢山食べた。基本、お代わりだ。おそらくメンバーで一番、夜飯を食べているだろう。
 明日も今日のような天気だそうだ。もう少し早めの時間から出発して、再度、頂上へチャレンジすることにした。
 飯の後の便の量も多く、体調は、明日に向けて死角なしだ。
 21:00 就寝



High camp

6/25/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)



 7:00 起床。8:20に出発した。昨日より一時間早い。
 トラバースの登りでは、風はそこそこ吹いており、雪も昨日よりある。そして、デボラは今日も遅い。

 デナリパスでの風は昨日以上に強かった。そこで止まらず、20分ほど先に進んだところにある岩の陰まで進んで、風の弱まるのを待つことにした。
 急な雪面を風に向かって直登して、大きな岩の麓まできた。しかし目指した岩は風を遮る役目には全くなっていなかった。
 5分ほど滞在したが、ますます強くなって行く風に、我々は再度、撤退を余儀なくされた。

 この厳しい行程で、私のフェイスマスクがずれたまま歩いていたので、顔面が凍ってしまった。気づいたら、左右の頬に数ミリの氷がぶら下がっていた。直ぐに氷を落として暖めたのだが、テントに戻った後で確認すると、左側は特に日焼けの様に黒ずんでいた。凍傷だ。皮の部分だけなので、まさに日焼けのようだ。

 下りでもデボラは大活躍だ。直ぐにビビッて、一向に進んで行かない。少し進むとスリップして落っこちる。キャラも、道中では文句の言いっぱなしで、うるさいうるさい。


 天気は、雪嵐になっていた。campに戻ると風が強くなってくる。直ぐにテントにもぐって仮眠をした。風は20msを越えてきた。この風では、外に出て活動する気になれない。
 まったく動けない状況のまま、20時にガイドが来て、凍傷の悪化の予防に、イブプロフェンを飲むように指示された。
 22:00 夕食がテントに配布された。タコスにポテト、チーズ、ベーコンを挟んだものだ。しっかり吸収できるように、ものすごくゆっくり食べた。風は止まない。


View from High camp

6/26/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)



 10:00 風は続いているが、日も射し始めた。雪と風と陽だ。
 テントの中でうだうだしていたが、ガイドのテントが雪の吹き溜まりになっていまったので、掘り起こしにいった。お湯の配給があった。ぬるい。いまいちだ。

 11:15  朝飯の配給がきた。シナモンベーグルとベーコンだ。お腹がすいているので、何でもうまい。ゆっくり食べた。
 食後にCMCに行くと凍り付いていた。融けるまでしばらく待つことにした。

 18:00 ガイドのMikeがテントに来た。今後の見通しを話す。明日、明後日は曇りの見通しだ。雪崩の危険確認と、事前のラッセルを兼ねて、明日は他のチームと共同でデナリパスあたりまで偵察隊を出す。そして、明後日が登頂のターゲット、というシナリオだ。
 Mikeは他のテントも訪問していたが、彼はデボラに、頂上へ登るのをあきらめるように話したそうだ。彼女は了解した。HPにもあきらめるように話したそうだが、彼は登ることをゆずらなかったと聞いた。

この数日の雪は、high campより低いcampの方が沢山降ったようだ。14th campでは、一気に1mの積雪となった。雪が落ち着くまで、全く身動きが取れなくなってしまう量だ。誰も上がってこれないし、誰も下りれない。

 21:30 夕食がなかなか出てこない。調理にかなり苦労をしているのだろうか。この日の夕食は、マカロニ&チーズに刻んだドライトマトとオリーブがのっているやつ。量が多かったが、ゆっくり味わって食べた。


High camp

6/27/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)



 10:00 予定通り10時に朝食起き。オートミールとぬるいお湯だ。紅茶を作る。
 なかなか風が収まらないが、今日は動けない程でもない。
 12:00 テントが雪で覆われたので、雪を降ろして回りからどかす。そしてまた寝た。
 15:00 CMCタイム。high campのトイレは壁が低い。回りから見えるのもいまいちだが、風が吹き込んでくる構造で大変寒い。ももに雪があたり、融けて濡れてまた凍りつく。氷原のプーさん現象と名づけた。

 今日のこの時間を使って、テントの周りにもう一段高い壁を作ることにした。雪の吹き込みを減らして、今日の夜を快適にし、明日の朝に、雪に埋もれているものを探す手間をなくすためだ。
 一通り、壁を作って、テントに戻ると、また、後はやることがない。すると食べたいものが頭に思い浮かんできた。
 こういう想像は、今まで長い間、山で過ごしていて、無かったパターンだ。というか、どうしようもないので、避けていたパターンだ。よほどお腹がすいているのだろう、想像が止まらない。
 浮かんだのは、肉の牡蠣油炒め、もつとねぎのみそ炒め、しゃぶしゃぶのゴマだれ。どうも、油ギッシュで、こってりしたものが食いたいようだ。

 20:30 明日の天気は良い様だ。基本的にサミットへGO!だ。三回目の挑戦だが、わくわくしてくる。
 デボラの他に、サブガイドのネイトの体調が優れないので行かないことになった。まだ治ってないらしい。チームは、ガイド1人と5人のメンバーで進むことになる。いろいろ厳密に言うと問題はあるが、これまでのチームの感じでは、乗り切れる気がする。
 Mikeと、明日は他のチームの後について、ラッセルの負担を減らそうと話した。今日の天気がいまいちだったので、昨日考えていた作戦の、ラッセル兼偵察隊は出せなかったのだ。


 22:45 夕食は毎度おなじみのマカロニ&チーズ。ただしマカロニが貝殻の形のパスタになっていた。自分のガーリックを足して、今日も、ゆっくり食べた。既に、出発時にあったお腹の脂肪は、全て使い切ってペちゃんこだ。少しでも栄養を蓄える必要がある。

Morning of High camp

6/28/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)



 7:15 起床。テントの回りは6時半過ぎからとても騒がしかった。どのチームも皆、この日に登頂を狙っている。ちょうど日が照り始めて、大分暖かくなってきた。支度にも余裕がある。

 9:00 出発。まずはトラバースだが、Alpine Ascents隊の2チームに先に行かせる。どちらも中国人のグループがメンバーだ。作戦通り、約30分の間をおいてから出発した。
 だが、前のチームは気絶するほど歩みがのろい。30分後に、トラバースの最初のあたりでもう追いついてしまった。
 我々は、彼らを追い越すことにして、Alpine Ascentsのガイドからラッセル隊を出して、我々の前でデナリパスまでのラッセルをするように言った。つまり、Alpine Ascentsのガイドによるラッセルを、我々が固めて、その後で中国人チームがゆっくりくればいいという作戦だ。

 雪が深く、ラッセルの進みも遅かったので、Denali passDenali pass
度々、止まらなければならなかったが、12時にはデナリパスに着いた。
 デナリパスでは、これまでの日々が嘘のように、全く風が無かった。快晴で風もなく、最高の登頂日和だ。まだ、ここからの先は長いが。


直登 デナリパスからは、雪の急な尾根を直登していく。
ゼブラロックとよばれる岩の脇を、ランニングビレイをしながら越えて行き、アーチディーコンズ・タワーを巻いて厳しい登りを続けると、フットボールフィールドに出る。ここは平坦でとても大きい広場だ。ここまできて大休止をとった。最高の天気が続いている。

 HPは出発から空身だった。荷物はガイドのMikeに持ってもらい登っていく。マークとキャラのカナダ人コンビは、出発時にこれを見て、かなり嫌な顔をしていた。
 デナリパスを過ぎると、早くもHPは疲れきっていた。ふらふらしながら、登っていく。急坂では、結んでいるロープをつかんで登ってくる。何度か注意をしたが、きついところではロープに体重をかけて、引かれながら登ってきた。これは本当にどうかと思う。

 フットボールフィールドから聳え立つPig hillは、30度強の急斜面だ。ここをジグザグと折り返しながら、きつい坂を登っていく。

坂を登りきったところから、デナリリッジと呼ばれる馬の背の稜線を渡って、最後のプッシュだ。Denali ridgeDenali ridge

 遥か下のフットボールフィールドには、他のチームが歩いてくるのが見える。ビデオカメラを頭にセットして快晴の稜線を登っていく。 




 19時に頂上についた。雲も無い、絶景だ。最高だ。長かった。サミットを踏んだ時、大声で叫んだ。



 散々、写真をとって、ゆっくり休んでいると、風が出てきて、気温も下がってきた。30分も経つと次のチームが到着する。その後も次々と人が到着してきて、登頂ラッシュになってきたので、下りることにした。狭い稜線では、登ってくるチームとのすれ違いで20分ほど待たされたが、全体としてはスムーズな下りだった。

 23時にcampに戻った。Nateがタイ風スープとパンケーキを作って待っていた。興奮が残っていたが、1時頃に寝た。


Climb down

6/29/2014 Camp 4-High camp(標高5,200m)



 朝飯のオートミールもそこそこに、16th ridgeを下る。少し風があるが、天気は良く、雪も締まって快適な稜線下りだ。数箇所あるfixed ropeも順調に下る。HPもなんとかついてきているようだ。デボラはまた遅れている。

 Headwallまで来ると、雪の量が半端なく増えてきた。先日の雪がまだ残っている。やわらかい雪でずぼずぼ足がとられる。ころびそうになりながら、進むので精一杯だ。今度はHPが遅れている。ティムは自分のストックをHPに渡して、しっかり着いて来る様に激をとばす。

 Headwallの下りの途中で、大蔵ガイドと会った。Denaliに毎年気象メーターを設置しに登っている有名人だ。今年からは、edge of the worldの辺りにメーターの設置場所を変えたと教えてくれた。CMCをバックパックからロープで引きずって、まるで子犬を連れているみたいで、変なおじさんとしてかなり目立っていた。

 14th campに着いて、一旦、仮眠用のテントを建てたが、畳んで直ぐに出発することにした。今後、天気が悪くなりそうなので、その前にwindy cornerを抜けるのだ。しかし、この判断は裏目に出た。
 14th campを出発してしばらく経つと、またHPの歩みが段々のろくなってきた。これまでの疲れが一気に回ったようだ。windy cornerの手前では、5歩歩くと30秒ほどぜいぜい言う状況だ。ここで、悪いことに、風が急に強くなってきて、吹雪になった。このままでは下のキャンプにも辿り着けないし、上のキャンプにも戻れない。

 我々はwindy cornerの真ん中でビバークをすることにした。ここは、かの植村さんが冬季登山で遭難したのではと言われている場所だ。ここでのビバークは、なかなかできる経験じゃない。

 我々は道を外れ、少しでも風を避けやすい方角の斜面に移動して、スコップで雪面を慣らすと、幾つかのテントを張り、そりや荷物が飛ばされないようにアンカリングした。

tent 2人用のテントに4人入って寝た。私のテントは、ガイド二人とティムと私だ。テントの中では今日のHPの話になった。文句を言うというよりは、こんなに直ぐへたれてしまう人間がいたとはいう驚きの話だった。
 狭いテントが、殆どラッシュアワーの電車のような状況だったが、私は大変ぐっすり寝ることができた。夜の間にテントに積もった雪が、テントの入り口を押しつぶし、バスケットボールのような大きさで私の顔を覆っていたが、全く気にならないくらい快適だった。


キャラ

6/30/2014 windy corner(標高4,000m)


 朝の11時になると、雲が切れて晴れ間がのぞいた。緊急キャンプではあったが、ゆっくり体を休ませたので気分はいい。

 出発の準備を始めた。今回は歩ける先発隊と、ゆっくりな後発隊に分けて進むことにした。私は先発隊に入って、ずぼずぼ沈む雪の中を、ジャンプしながら踊るように進んでいく。今日は対向して登ってくるチームも多い。道を譲りながら進んで、2時間をかけてモーターサイクルヒルのcampに辿り着いた。そこはGWの雪山のように、うららかで、日の光がきらきらしていた。沢山の人が集まって、まるでビーチのようだ。ここで、後発隊を待つ。

 吹雪防御の厚着から春山モードの薄着に着替えて、11k camp
日焼け止めを塗っていると、後発隊も程なく着いた。その後も、直ぐには出発せずに、ここでcampを張っていた他のチームからお湯をもらったり、CMCを使ったり、伸び伸び過ごすことができた。
 このキャンプで新しいチームに参加したときに、沢山の食料をもらったので、あまりをここにデポしておいたが、それを持って帰らなければならない。他に多少の共同備品を荷物に加えると、荷物はまた50kg台に増えたようだ。

 このcampからはノンストップでBase campを目指す。天気は上々で、これから先はスノーシューで比較的なだらかな坂を下っていく。
 この長いルートは、一ヶ月前に登ってきたルートだ。夕方から白夜になり、温度が下がってくると、ガスがかかってきた。


 スキーヒルを下ったあたりで、HPはまた、ふらふらモードになった。ふらふら、ずぼずぼ、ぜいぜいだ。Mikeは、HPの荷物を橇につんでMikeの荷物の後ろに繋ぎ直した。なんでもありか? 無敵モードのHPだ。キャラも苦笑いをしていた

 最後の氷河の下りは、長い長いルートだ。そのどん詰まりが、ハートブレイクヒルだ。行きでは穏やかな下りだが、帰りの登りはつらいルートとなる。私は、この坂では上を向かずに足元だけをみて、ゆっくりかみしめて歩くことにした。これまでの記憶をぐるぐるたどっている。すると、うつむいた視界にテントが入ってきた。ついにBase campだ。一ヶ月に及ぶ、長い長い歩きが終わった。夜中の1時だ。

 テントを手早く建てると、ガイドがビールを掘り出してきた。1ヶ月ぶりのビール。ホットドックとハンバーガーを温める。豪華な真夜中のパーティーだ。ビールもハンバーガーもお代わりがあった。ゆっくり過ごして、3時に寝た。


base camp 次の日、朝は8時におきた。数日間、飛行機待ちをしていた他のチームが、既に起きてテントを畳んで出発をまっていた。

 行きは8人乗りだったが帰りは4人乗りの飛行機に分乗だ。荷物を載せると直ぐに出発した。また30分のフライトで町に戻る。
 タルキートナの町に戻り、また、皆でパーティーだ。夕方から、真夜中まで、アラスカンナイトを満喫した。


34日間の行程で、前半のチームが17日間で、後半のチームも同じく17日間だった。この内、3,000m以上の高所には24日間いたことになる。6月の丸々一ヶ月を使って、Denaliの登山は終わった。予定外の延長も含めて、タフではあったが、充実した経験だった。