Diary of 6/10-
Stagnation at 14k camp

14k camp

6/10/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 5:00 いったん起きてトイレに行った。外は少し雪が降っているが、風は強くない。嵐がくる予報だったが、まだ早いのか。
 霜がテントの内側いっぱいに広がっている。体がこすれる度に、雪のように寝袋に降ってきた。昨晩はテントの中で-20℃、外は-40℃だったそうだ。

 右手の中指に違和感がある。霜焼けのようだ。昨日は気付かなかったが、第一関節より上に感覚がない。スコップをむきになって使ってる内に、指が冷えていたらしい。他の指も少ししびれた感じが残っているが、その中でも中指はしっかり凍傷の初期段階だ。このしびれは数ヶ月は残るのだ。既に手は暖かくなっているが、右手に手袋をして、再度、二度寝をした。

 11:30 テントの中が暖かくなってきて、目が覚める。気分がすっきりした。SPO2は88/75。安定している

 12:00 ブランチの時間になった。グレービーソースをかけたハッシュブラウンだ。香ばしくてやたらおいしい。

 15:00 cache pointへ出発した。一昨日、置いていきた荷物を取りに行くのだ。今日は空身でアイゼンなしで下った。30分くらいでcacheに着いて、休みなく戻ることにした、帰りは1.5時間で戻る。天気は雪だったが、比較的、暖かく感じた。

 キャンプに戻った後、キッチンテントに集合する。at kitchin tentDustin, Joe, me and Ron
2mmの細引きを使って、ファスナーの取っ手の延長ひもを作った。分厚い手袋をしていても操作ができるように、ダウンのジャケットやゴアテックスのハードシェルに直径3cmくらいの輪をとりつける。

 19:15 夕食は豆とベーコンチップのスープから始まった。Nickがエンチラーダを作ったがソースが本格的に辛い。私はいつもの通りお代りをしたが、半分も食べられない人がいた。皆は失敗作だと怒っていた。

 22:15 寝袋に入る。明日は9時起きの予定なのでゆっくりできる。しばらく風速10-20mの日が続きそうだ。寝る前にはマルチビタミンを取っている。SPO2は87/59。体調は余裕のようだ。
 今回もkindleを持ってきた。これまでの日程で「舟を編む」を読み終わり、次に「こころ」を読む。12時過ぎには寝たか。


headwallHeadwall

6/11/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 8:30 起きてすぐCMCタイムだ。便がしっかり出た。ビニールが一杯になったので、縛ってまとめておく。
 天気は快晴だが、このキャンプから望める稜線では、雪が舞っている。上部では風が強いようだ。
 別のテントではJohnが温度を測っている。昨晩も-30℃くらいだったようだ。

 今日は休息日なので、移動の予定はない。昼間、暖かくなってから、トレーニングを行った。キャンプの近くにロープを張り、Fixed Ropeを登るために必要なアッセンダーの使い方と、腕がらみで降りる方法を繰り返しトレーニングをした。
 その後、Running Belayを一発でかけ替えるマジックという方法を練習した。マジックはきれいにきまると楽しい技術だ。


Foraker 17:00 このキャンプから真正面に、Foraker山がそびえている。雲ひとつないForakerの山容は本当に美しい。テントの入り口を開けて、しばらく外を眺めながらリラックスをしていた。



17:45 この遠征も半分を過ぎたということで、ガイドとメンバーの個人面談があった。私は一番に呼ばれたが、ガイドからは心配していないという一言で終わった。もうちょっとアドバイスとか要望とかあるのかと思ったが、拍子抜けだ。私はこの時、他の人もこんな軽い感じの話だったのかと思ったが、そうではなかったようだ。

 今夜のいい天気は明日まで続くらしい。明日はまたcache pointへ荷物を運ぶ日だ。ガイドからの指示でロープチームを変えて、私はJohnとErikという若いノルウェー人メンバーと組むことになった。

 夕食は生のブロッコリーとクリームチャウダーのスープから始まった。hamburger
 時間があるときには、手をかけた料理となる。ソーセージのパテとチーズ、ベーグルを焼いたら、ハンバーガーのできあがり。一人一人つくるので、待っている時間が長いが、最高のごちそうだ。

 20:50 読書タイムだ。今晩は風もなく、テントは暑かったが、夜半から冷えてきた。今年は、Denaliを寒気団と暖気団が交互におおっているらしい。

climbing to headwall

6/12/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 6:00 実に寒い朝だ。もこもこのダウンジャケットを着ていても、外では寒い。
 起きてすぐ朝飯になった。ブルーベリージャムを挟んだクッキーにオートミールの組み合わせは、アメリカっぽいが、あまり食欲をそそらない。しかしアールグレーの紅茶は美味しかった。

 9:45 次のCache Pointへ出発だ。まずはキャンプから良く見えるHeadwallと呼ばれる大きな坂を登る。下部は標高差370mの比較的急峻な坂で、上部は有名なFixed Ropeがかかっている氷の坂で、更に急峻になっている。標高差240mで平均斜度55度くらいはある。ブルーアイスの露出している部分もある。

team from 14k camp 途中で休んでいると、いろいろな人とすれ違う。この日は有名な登山家のSteve Houseが我々を追い越してHigh campへ向かった。
 また、新潟からきたマキさんという人とも知り合った。20代後半位の彼は、Denaliを単独で登っていた。他の何人かの単独同士でゆるいグループを組んでいるらしい。14k campで既に6日間を過ごし、いよいよ食料がつきそうなので、最後のチャンスとしてHigh campに上がるのだそうだ。これから強風が来る予定になっているが、大丈夫だろうか。

 12:30 Fixed Ropeの少し下まで出た。見上げると、我々の前を歩いている幾つかの組は、とろとろと、なかなか進まない。Fixed Ropeの坂は急な氷の壁になっているので、なかなか登れないところに、慣れないアッセンダーの扱いに手間取っているらしい。
 この坂では、殆どどの組にも、慣れていないメンバーが一人くらいはいる。慣れている人も含めてロープで繋がっているので、結局、全員がとろとろと進むことになる。

 これだけ進みがとろいと普通はいらいらするものだが、我々は全然困っていなかった。実は、我々の隊のもう一つの組が、ぜんぜん追いついてこないのだ。

 私の組ではガイドのNickが、我々の体力の耐久試験を行うように、坂の途中で段々ペースを上げていった。それに、ノルウェー人と私が汗だくになってついていった。ところが、もう一つ組のJoe, Ron, Kenはもともと耐久力があまりない。最初は我々と同様に、段々、加速しながら進んでいたようだが、直ぐにオーバーペースとなって、スローダウンしてしまったらしい。
 それでも一度目の休憩のタイミングでは我々が休んでいるところに追いついてきたが、それ以降は、我々の組が長い間休んでも追いついてこれないくらい差が開いた。

 しかし、Fixed ropeを登ることを考えると、ここらへんで二つの組がまとまっておく必要があるので、ここで我々は長い休憩をとっていた。
 彼らを待ってい内に、ガスがでてきた。風もある。

 散々待ってから、もう一つの組が登ってきた。break at headwall
かなりへばっているようだ。皆、どさっと音を立てるように荷物と体を下ろした。
 Joeはこの登りのペースに不満のようだった。荷物を下ろすとガイドのNickに対して、「このスピードで、我々の能力をテストしているのか」と文句を言った。Nickは、「そうだ。今日だけでなく、いつでも実力を確認させてもらっている」と返した。

 ガイドがアイゼンが緩んでいないかを、一人一人チェックをした。Fixed Lineでは、アイゼンが外れて途中で止まってしまうことが、良く起こるアクシデントらしい。Ronのアイゼンは緩く留まっていたので、きつく調整して履き直した。

 そろそろ出発というタイミングだが、もう一つの組のメンバーは明らかにまだへばっていた。Nickがしびれをきらして、三択を出した。「登るのか?降りるのか?荷物を多少負担してもらったら登れるのか?選べ」と。
 一瞬の逡巡の後、三人とも、荷物を負担して欲しいと言った。我々の組の三人のメンバーとガイドの二人で共用の荷物を中心に負担することにした。私もKenの食料袋を追加で持った。一人あたり、3kg程度の負担増だ。あまり、気にならない。

to fixed rope そこから20分程登り、Fixed Ropeの直下まできた。我々が留まっている間に追い越して行ったグループが二組ほど、Fixed Ropeに取りつき始めている。この組の後に我々が取りつく予定だ。
 Headwallの上からガスが下りてきた。天気は下り始めている。我々がHeadwallに登った後、さらにRidgeを登り、途中で荷物をCacheする予定だが、時間的には厳しいようだ。まだ、前のグループはもたもたしている。
 5分ほど待った後、天気を考えて、Nickはここで登るのを止めて降りることにした。
 下りは快調だった。もう一つの組もそれ程遅れることなくついてきた

 キャンプに戻ると、皆で雪壁作りを始めた。テントを囲むように雪のレンガを積み上げていく。地面からスノーソーで大きな雪の塊を切り出し、四辺を削って30cmから50cm四方の直方体を作り出す。これを1.5m位の高さまで積みあげ、キャンプの周りを取り囲み、風除けにするのだ。
 何かを作るというのは、実に楽しい。少しづつ出来あがっていく壁を見たり、下の石の角度に合わせて上の石の削りを調整したりすると、石切り職人の気持ちが少しわかるような気がする。
 この作業では、ノルウェー人の二人が大活躍だった。小さいころから、慣れた作業のようだ。
 二時間程壁を作って、キャンプの東側の風除けはできた。残りはまた今度設営だ。

 18:00 夕食はタイ風の酸っぱ甘辛いスープとシェファーズパイだ。どちらもいまいちの味だった。

 夕食の後、キッチンテントでくつろいでいると、Kenが遠征から降りることになったと発表があった。Kenは、またあの荷物を持ってHeadwallの壁を登る自信がないそうだ。自分の力は尽くせたので悔いはないとも語った。すがすがしい顔をしていた。
 この日、同じAMSの隊がHigh campから降りてくる。High campで6日間過ごして、天気が回復せず、頂上に登れず時間切れになったのだ。この隊が22時位に14k campを通過するので、Kenはこの隊と一緒に下ることにしたそうだ。

 この話を聞いた後、Ronが自分も下りると言いだした。Ron泣き虫Ron
彼も限界を感じていたらしい。残念だが再度鍛えてから挑戦したいと語った。途中から、感極まって泣き出した。
 Ronは体力があるように見えたが、急坂で止まってしまうことがあったり、道具の使い方を知らなかったりと、経験不足は明らかだった。彼に、また経験を積んでから来れば、今度は登れると思うよと声をかけた。

 テントに戻ると、こんどはJoeが私に相談をしてきた。自分はどうすべきだろうかと。私は、率直に話すことにした。
 今日下ることになった二人のメンバーより、Joeの方が体力的に弱いこと。これは絶対に登れないということではないが、安全面でのリスクが大きいこと。ガイドにも相談してみたらどうかと。
 Joeは、登るのを止めるのは何時でもできるから、もう少し自分の限界を見極めたいと言ったが、ガイドには相談することにした。
 そして、テントの外でJoeとガイドが立ち話を始めた。途中から、ガイドはJoeに対して、下りるように説得を始めたようだ。そして、15分ぐらいの立ち話の後、彼も下りる事に同意した。

 Joeも急いで荷物を畳んでパッキングを始めた。彼は、テントの中に食料や靴下やいろいろなものを散らかしているので、仕度に時間がかかる。
 寒い中、23時位に3人が出発をした。我々はさよならを言って、見送った。
 突然のリタイアだった。残ったメンバーはガイド二人、ノルウェー人二人と私だ。いろいろな事が起きた長い一日だった。



14k tent

6/13/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 10:00 今日は起きる時間を決めないで朝を迎えた。10時位になると気温はぐんぐん上がって、10℃くらいだろうか。日が差していると、この後、テントの中は蒸し風呂になってくる。寒くも無く暑くもないこの時間帯が、起きるのにちょうどいいのだ。
 今朝は天気が良く風もなさそうだ。SPO2は85/75。まあまあだ。

 朝めしはオートミールだった。これにカリカリに焼いたベーコンをデザートと称して食べた。もともと、食事のメニューに野菜は少ないが、肉も少なくなってきた気がする。お腹一杯肉が食べたい。

 朝めしの後も、5人はキッチンテントでくつろいでいた。
 昨日、隊から離れた三人のメンバーについて、Nickから話があった。
Kenはスローだが登れるメンバーだと思っていた。彼がリタイアを決めたのは残念だ。
Joeは問題外だ。彼がこのまま登っていたらリスクがあった。
Ronはメンタルが弱いようだ。彼のリタイアも仕方がない。
 Nickがどこまで意図的か分からないが、思い返してみると、一昨日の個人面談から、3人がリタイアするまで、チームがshape upされる流れがあったように感じた。

 Nickはまた、今後の登山のストラテジーについて、彼の方針を話した。
 強いメンバーが残ったので、登れる可能性が高くなった。High campでステップを踏んで進むのではなく、Touch&Goで行きたい。具体的には、14k campからHigh campに移動した翌日にSummitへ登頂し、その翌日に下りてくる。二日間の安定した天気があれば、それは可能だろう。この天気を見極めて、High campへ出発したい。

 昨日、登頂した隊では何人かが、凍傷のため指先が黒ずんで膨れてしまったそうだ。High campでぐずぐずしたり、天気を無理して登ると、例え登れても凍傷のリスクが高くなる。これを避けるためには、14k campより上での滞在を減らすことが重要だ。
 Patient, Patient。Denaliでは忍耐がとても大事だと、繰り返して語った。

 12:00 まだキッチンテントでくつろいでいる。外は雪が降り始めた。晴れながらの雪だ。稜線ではガスがかかっている。
 14k campは実に安定したCampだ。雪崩やクレバスの危険が少なく、天気も悪くなりにくい。天気待ちには絶好だが、結果として、ここに閉じ込められているメンバーが多いとも言える。


 この時間を使って、アタック用の荷物作りをした。持って行く食料をより分けたり、アタック用の靴下や手袋を詰め替えたりといった事だ。後は爪切りをすると、やることが無くなった。私はKindleを読み始めた。
 ノルウェー人達はトランプをしている。ガイドは他のテントでだべっているのだろう。落ち着いた午後だ。

 kindleでは、浅田次郎の旅行に関するエッセイを読んだ。旅に出て、自己の確認を始めると旅がつまらなくなる。旅に出たら、自己の喪失を楽しむ方がいいと。
 わかるなぁとも思ったが、このデナリでは、既にその先を体験しているような気がする。危険と寒さと忍耐に打ちのめされて、何も見えない吹雪の中で、white outをしているのだ。自己喪失を楽しむというより、自己喪失しかない中で、他の色を探している感覚だ。

 14:00 午後のコーヒータイムと称して、本物のコーヒーの粉を使い、Jetboilのフレンチプレスでコーヒーを入れた。実においしい。この隊ではStarbacksのVIAインスタントコーヒーも人気だが、やっぱりリアルコーヒーは粉っぽくても美味しかった。タコスを焼き、チーズに巻きつけ、お茶受けにした。

snow brock wall お腹も落ち着くと、昨日に続いて雪壁作りを行った。今回はノルウェー人達と三人だけだが、効率的に進めることができるようになった。一人が雪の地面をのこぎりで切り取り、一人がスコップでブロックとして掘り出し、もう一人が積み上げる。1メートル位の高さの壁をテントを囲むように5メートル位伸ばして、今日の作業は終えた。

 CMCにもすっかり慣れた。雪で少し高くなった段を作り、自分の尻の高さに合わせる。周りを囲ってあれば、風も吹き込まない。楽しいトイレタイムだ。


 夕食はスイートコーンチャウダーで始まった。私はガーリックのペーストを足して、味をホットにする。スープの間に、ペンネとミートボールを温める。肉々しい感じが食欲をそそる。皆、自分の皿の分の料理が出来上がるのが、待ち遠しそうだ。

 毎日20時になると、パークレンジャーによる天気予報が流れる。この時間、多くのクライマーがテントから出て、見通しの良い外でトランシーバーを聞いて、明日以降のストラテジーの参考にする。頂上や14k付近といった高さ別に天気、気温、風速、風向の情報を流すのだが、今年はこの予測が大変難しく、翌日の情報ですら、あてにならない状況だった。熟練ガイドも、いろいろな情報ソースを集めながら、天気読みに苦労をしていた。

 天気予報の後はやることもない。21時に寝袋に入った。82/60。安定している。
3時ごろ、夜小便に出た。ピーボトルを使うまでもない。風もなく暖かい夜だった。

headwall climbing in snow

6/14/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)



 8:45 今朝は雪もなく暖かだ。87/60。曇り空から晴れてきた。

 12:30 いよいよ次のcache pointへ、荷揚げに出発だ。16th ridge と呼ばれる尾根の、1/5くらい登ったところにある小さな広場に、食料とスコップ等の共同備品を埋める。
 ガイド二人とノルウェー人二人と私が一列で登った。人数が減ったので荷物は重くなったが、この面子なら余裕のはずだ。しかし、この日は久しぶりの登山日和なので、多くのパーティーが14th campから出発し、Headwall は大渋滞となった。とりわけ、Fixed ropeでは、まったく動かない。かなりいらいらする展開だ。

 我々はfixed ropeのルートが終わるとそこでは休まずに、16k ridge
広場で一息ついている複数のパーティーを抜かして、16th ridgeを登りだした。
 Running belay 用のカラビナも使わずに、cache pointまでかなりのスピードで登りこみ、17時着。そこから、掘って埋めて休んで30分だ。
 帰り道は、一時間の超特急でキャンプまで降りた。
下りのfixed ropeはかなり硬く、腕がらみがすごくやりづらい。そして途中でまた雪が降りだした。
 今後、月曜にはHigh campに出発したいが、天気に関してはまったく希望がもてない。

 19:00 ディナー。野菜のスープとタコスピザ。タコスを二枚焼いて、その間にサラミとチーズを挟んだものだ。これがうまい。

 20:00 天気予報の時間だ。火曜の風は45mph(miles per hour)の予報。日本風に言えば風速20ms(meter per second)の風となる。この風では、明日の日曜から火曜まではお休みだ。
水曜は雪だが10mphの風の予報だ。ここが狙い目か。
 しかし、日々大きく変わる天気予報。はっきりしない、やな感じだ。
 21:52 本を少し読んでから寝た。 79/69。

view from edge of the worldView from Edge of the World

6/15/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 10:00 この時間に起きるとテントが暖かい。既に20度くらいはあるだろうか。濡れたものをテントの中の紐につる下げて、乾燥祭りとなる。83/60。体調も悪くないので、別にパルスオキシメーターを測る意味もあまりないのだが、習慣で測っている。
 朝食は、オートミールの一種とリアルコーヒーだった。リアルコーヒーは、やっぱりいいね。

 12:30 14th campの近くにある絶景ポイント、Edge of the worldまで@ edge of the world
ハイキングに出かけた。昨日からの雪が30cmほど積もっているところを、テクテク30分弱ほど歩いて、1,800mの切り立った崖の上にでる。残念ながら、雲の中の眺めとなり、高度感もなかった。

 帰ってきてから、来週のランチ袋を用意した。今週のあまりと来週用にとっておいた食料を足して、要らないものをより分ける作業だ。来週用には、サミットの日のランチも含んでいる。
 後は、読書とpatient。14th campでの停滞が続く。

 18:00 夕食はスイートコーンチャウダーから始まる。もちろん持参のガーリックを入れて、うまうまだ。日清のラーメンには、アメリカっぽくミックスベジタブルを足す。アメリカでは日清のラーメンはかなりポピュラーなようだ。
 今日14th campに戻ってきたチームは頂上に行けたが、半分のメンバーがひどい凍傷にかかってしまったそうだ。我々のガイドは、良いタイミングを狙いたいと強調していた。

 20:00 天気予報。火曜は風速35-40mph、水曜は風速25mph、木曜は風速25mph。火曜が悪いのは変わってないが、水曜、木曜も悪いコンディションになってきている。じりじりと土俵際に押されていく感じ。

 21:35 寝袋に入る。隣ではノルウェー人が数独をやっている。祈るしかない感じだ。

Weather meterWeather meter

6/16/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)


 10:00 起床。夜中に風が吹き出した。SPO2は88/71。少し高い。
 朝食はハッシュドブラウンとベーコン。これは、ご馳走だ。
 昨日は、summitへ向かった何人かのprivate groupが帰ってきていないそうだ。ビバークだろうか。状況はよくない。

 14th campに、日本人のグループが来たそうだ。Denaliの登山では圧倒的にアメリカ人が多いが、今回私が会った中では、ブラジル人や韓国人も目だっていた。アジア系では他に、中国人もそこそこいたが、日本人は独りで登っている二人とすれ違っただけだ。残念ながら、あまり存在感がない。

 日本人のグループは100mくらい先のテントで、Mountain Tripのチームに入っていた。
アラスカ在住で探検家の舟津圭三さんをガイドとして、佐賀の松本さんと千葉の石川さんの三人で、皆さん私より一回りから二回り上の元気なメンバーだ。他にMountain Tripからのアメリカ人ガイド達とのチームを組んでいる。
 彼らのテントでは、アラスカサーモンの切り身を炒めたものをご馳走になった。その後、皮の部分だけを再度集めて、カリカリになるまで炒めなおした。本当にご馳走だ。これにアルコールがあれば最高なのだが、山に入ってからは全く飲んでいない。
 彼らと、久々の日本語のはなしを楽しんで、テントに戻った。

 午後は音楽当番になった。キッチンテントにBluetoothのスピーカがあるので、iphoneで音楽を流す係りだ。普段はダスティンが担当でアメリカンな音楽が中心だが、飽きてきたのだろう。SuperflyとBob Marleyを中心にして、明るいアゲアゲな感じのBGMにしてみた。

 18:50 夕食は、キッコーマンのインスタント味噌汁で始まった。白味噌でわかめと麩が入っている。なかなかうまい。メインは、マカロニ&チーズのツナ入りだ。これも定番だが、うれしいメニューだ。

 20時の天気予報では、明日の火曜と水曜は40~50mphの強風が吹く。木曜は15mph、金曜は25mphだ。水曜の予報が悪くなった。じりじりと押し切られている感じがする。

 21:11 就寝の前に、ビタミン剤を飲んだ。指のつめの手入れをして、右手の中指には軟膏を塗っておく。14th campも長い滞在になった。もう寝袋に入れて乾かすものはない。


ヘリコプター

6/17/2014 Camp 3-14k camp(標高4,300m)





 10:53 遅起きだ。昨晩の風はやんだが、外は真っ白なガスで覆われている。寒くない。 朝食はシリアルにお湯で溶かした粉ミルクだ。


 今後のストラテジーを話した。木曜にhigh campに登り、金曜にサミット登頂のスケジュールとなる。天気待ちをしている間に、我々の日程では、ラストチャンスとなるスケジュールまで追い込まれてしまった。


 14th campからhigh campのある尾根はよく見える。今日はレスキューヘリがhigh campに飛んでいった。誰かが胆石の痛みで動けなくなったらしい。


 昨日の続いて再び、日本人のテントに行った。メンバーの一人、石川さんの会社は、会社を上げて7 summitの登頂を奨励しているユニークな会社だそうだ。石川さんも豪快な感じだ。
 この後、石川さん達とは会うことはなかったが、無事登頂したそうだ。


 夕食は、ベジマサラのインド飯とホットガスパチョだった。ホットな感じがいい。


 20時の天気予報は、今度は木曜が悪くなって、金曜土曜が良くなっていた。更に一日押し込まれてしまった。普通のスケジュールでは間に合わない。しかし帰りをノンストップで降りれば、まだラストチャンスのラストチャンスのスケジュールでぎりぎり修正が効く。我々はどうすべきか。


 この天気予報を受けて、ノルウェー人達は帰りたいと言い出した。ノルウェー人とノルウェー人と
仮にぎりぎりの日程で行けても、下りに無理があり、base campからの飛行機がその日に飛ばないと、帰りの日程に間に合わなくなるからだ。
 私はやめたくなかった。まだ力を出し切ってない。中途半端で終わりたくはなかった。

 ガイドから私に提案があった。11th campに着いたばかりの他のチームで、一人急用で帰ることになった。向こうが受け入れてくれれば、そちらに参加することもできる。11th campからの日程をもう一度やり直すことになるがそれでもいいか?


 これはチャンスだろう。今週の金曜土曜の登頂のチャンスには間に合わないので、大きくスケジュールがスリップするが、道が開けた感じがした。強く希望をして、先方と調整してもらい、私だけ別チームに参加することになった。


 ガイドに衛星電話を借りて、何箇所か日本に電話をして、不在の間のお願いをした。

go down 我々のチームは2時間ほどでcampをたたみ、11th campまで、夜中に降りていった。天気も穏やかでスムーズな下山だ。11th campでしばらく休んだ後、2時頃にチームは出発をしていき、私は残った。去る前にチームメンバーは、沢山のランチ食料を私に置いていったが、あまり好みのお菓子はないだろう。後でより分けるが、多くはごみになりそうだ。
 この新しいチームのガイドはMikeだった。夜中に挨拶をして、早々に新しいテントにもぐって寝た。