Diary of 6/4-
climbing with sled

to camp 1trail to camp 1

6/4/2014 Kahiltna Base camp (標高2,200m)




 1:00 今日は昨日より更に早い午前1時に起きた。空は快晴。白夜なので、基本的に何時でも明るい。そしてこのBase campからしばらく、Denaliの低い標高のキャンプにいる間は、昼の厳しい照り返しと、緩んだ雪を避けるため、朝早い時間の移動になる。
 昨日のトレーニングの成果だろう。今朝の出発準備はきびきびと進んだ。

4:00 Basecampを出発した。まず、Heartbreak hillと呼ばれる坂を下り、Kahiltna氷河という大きな氷河の本流に出る。この心臓破りの丘という名前は、登山の帰り道となる上り坂で実感することになるが、下りでは穏やかな坂としか思えない。
 氷河の本流にぶつかった後、右に大回りの旋回して、それから氷河の上流に向かってゆっくりと登っていく。この日は、出発点と到達点の標高差が200mに対して、約9kmの距離の歩きとなる、ゆるやかな登りのコースだ。

 私の前をブラジル人のJoeが歩いている。彼はチーム最年長で60歳であり、この数年でアコンカグア、エルブルースやカルステンツを登り、7サミットに挑戦しているそうだ。しかし、彼の歩き方からはあまり経験を感じられない。あまりスノーシューズに慣れているようではなく、また荷物の重さで体がぶれている。
 また、そりの重心が高いようで、雪のでこぼこでそりが蛇行し、何度か途中で、上下が逆さまにひっくり返った。そりがひっくり返ると、ダッフルバックのでこぼこが雪面への抵抗となって、極めて移動が重くなる。我々は途中で何度か止まって、Joeがひっく返ったそりの上下を元に戻すのを待っていた。

 私のそりは快調に動いていた。荷物の重さも、途中でへばるほどではない。そりと超ヘビーなバックパックで移動という、初めての体験だったが、しばらく歩いていると、なんとかやっていけるのではいう手ごたえを感じ始めた。
 我々の隊はスノーシューズだったが、他の隊では移動にスキーを使っている隊も多くいた。この氷河のあたりだと、ほぼ半々くらいのように見えた。



camp 1 tent 8:30 Camp1についた。通常のBelow Ski Hillと呼ばれるキャンプ地点よりも、20-30分位手前の位置だ。今年は雪が多いので、こちらの場所を使っているということだ。それにしても、快調なスピードで camp 1に着けたことになる。
 キャンプ入る時も、まずゾンデ棒を地面に突き刺し、隠れたクレバスがないか念入りに調べた上で縄張りをして、初めて我々をつないでいたロープを解いた。

 キャンプでは、まずテントをはり、それから共有設備であるトイレのkitchen tentkitchen tentの設営
設定と、キッチンテントの設営をする。キッチンテントは、調理と食事の場というだけではなく、皆でおしゃべりをしたり、座って休息をしたり、ゲストの応接間にもなるので、どのキャンプに移動してもしっかりと設営をした。


 午後になると、暑い日差しが照りつけて、テントの中の気温もぐんぐん上がっていく。お昼寝タイムだ。途中でピーナッツとスモークアーモンドをおやつに食べ、正露丸を飲んでおいた。調子は悪くない。

 16:30 SPO2は94%/80BPM。夕食はピーナッツのスープとマック(マカロニ)&チーズ。ピーナッツのスープも塩が効いておいしかったし、マック&チーズはこの後も定番のメニューだ。アメリカのソウルフードのようだった。

 明日は、荷物をcache pointまで運ぶ日だ。直ぐに使わない道具や先の日付の食料を、次のキャンプの手前まで荷揚げして穴に埋めておき、数日後、次のキャンプに移った後で埋めた荷物を取りにいく。荷物の重さを複数回の運搬で分散させると共に、高度順応のステップにするというやり方だ。

 20:00 明日も朝早い移動だ。三時起きなので早々に寝ることにした。SPO2は92/75。少し呼吸が浅いようだ。呼吸を整えてから寝た。


ski hillSki hill

6/5/2014 Camp 1-Below ski hill camp(標高2,400m)



3:00 予定どおりに3時に起きた。がさごそすると、同じテントのJoeは直ぐに起きてきたが、Ronは起きない。着替えたり靴を履いたりと、散々音を立ててやっと目を覚ました。この後日、どのキャンプでもRonはなかなか起きないので、予定時間になると直ぐに叩いて起こすことしにした。少し緊張感が欠けているのだろうか。

 起きて着替えると、まずキッチンテントに行き、カップにお湯をもらう。私はいつもティーバックで紅茶を飲んだ。ココアやフルーツフレーバーの飲み物を飲む人もいる。そして、朝飯だ。ハッシュド・ブラウンにベーコンとチーズをトッピングし、ケチャップをかけた。手間がかかっていて、暖かいご飯はありがたい。この後、上に登るほど、ご飯への手間はかけにくくなる。特に朝飯は時間がないことが多い。


 6:00 予定より少し遅れて出発した。1-2mm の弱い雪だ。少し風も吹いているが、気温は暖かい。この日の服装はウールのTシャツの上にR1 Hoodyを着て、薄いレインジャケットを羽織っているだけだったが、少しづつ角度が急になってくる上り坂でそりを引いている内に、とても暑くなった。視界は50m位で景色がいいとは言えないが、迷う心配はない。



cache point 11:30 途中、3回ほど休んでから、cache pointに着いた。Camp 1からCamp 2までのルートのうち、2/3くらい登った地点になる。
 ここまで登りのペースは、1.5時間位歩いて5-10分休みを保っていた。少し休みまでの間隔が長いように思った。
 cache pointでは、直径1mで深さ1.5m位の穴を掘って荷物を埋める。その上に竹の棒と小さな旗でできた目印を沢山立てておく。cache pointには一時間程滞在した。

 14:00 帰りは快調に下りキャンプへ戻ったが、レインジャケットの中は汗ですっかり湿ってしまった。濡れた服や手袋は、昼間はテントが暖かいのでテント内に干し、冷えこむ夜は寝袋の中に入れて乾かす。

 16:30 夕食の時間だ。今日は日清のTop Ramenから始まった。アメリカ人にもなかなか人気の商品のようだ。このラーメンは、安いアジアのインスタント麺にありがちな、気持ちの悪い味がしないので普通に食べられた。
 それから一枚づつフライパンでピザを焼く。pizza
トッピングは豪華にチキン、ポーク、サラミとチーズだ。美味しいが、とにかく全員分を焼くのに時間がかかった。
 キッチンテントでピザを待っている間、ガイドのNickは北海道のパウダースノーをほめちぎっていた。あの雪質が、あんなに町の近くで手に入るのは奇跡なのだそうだ。確かに、今まで会ったヨーロッパのガイドにも、北海道の雪を楽しみにしている人は多かった。


18:50 寝る準備に入る。明日はCamp 2への移動日だ。午前2時に起きてから、8時間の移動予定で、Big dayだ。早く寝ることにした。
 まず、濡れたシャツを寝袋に入れて、今日疲れた足をストレッチをしてから寝る。就寝前のSPO2は91/72。まずますだ。

ski hill

6/6/2014 Camp 1-Below ski hill camp(標高2,400m)



 2:00 予定通りに起きた。Ronは叩いて起こした。朝食はオートミールだ。オーツ麦に粉ミルクをかけ、それにお湯をかける。これまで食べたオートミールの中では一番おいしかった。それでも、あまり食べたい味ではない。

 出発までの間に、足のボルトによる出っ張りに貼ったパッチを変更した。これまでは、出っ張りの上にソルボバンをクッションのように貼っていたが、新しく、出っ張りを取り囲むように厚いドクターショールを重ねて貼り、出っ張りが靴に当たらないように変更した。このパッチは実に素晴らしい効き目であり、この後、足のすれた感じが激減した。Talkeetnaの町での買い物だったが、あの店、あいててよかった。

 5:30 camp 1を出発した。昨日同様に、1.5時間毎に一度位のぺースで休みをとりながら、ski hillを登り、途中から大きく右に曲がり、Motor Cycle Hillの麓のCamp 2を目指す。

 この日の荷物は実に重かった。調子に乗って、共用の荷物も多く持って行ったのも原因の一つだ。また、この重さで、ウエストベルトが普段以上にお腹に食い込んだのも、大きな誤算だ。途中から、トイレに行きたくなってしまった。
 はっきりって、氷河の上での大便は大変面倒くさい。まず隠れるような地形はなく、また、クレバスの問題があるのでロープを解くわけにも行かない。今日はまず、下痢止めを飲んで様子を見ることにした。
 その後も登っている途中で、定期的に便意はもよおしてくる。ゆっくりと深い呼吸をして、ウェストベルトに締められたお腹を広げ、酸素を深く取り込んで、この便意に耐えた。



cmc 14:00 camp 2に着くと、我慢のしすぎで気持ち悪くなっていた。しばらく動けない。
 30分ほど休んでから、トイレに行くことにした。CMCを共用荷物から取り出し、ビニールをかけ、テント場の周りに幾つかあるトイレ用の塹壕から一つを選んで、移動した。
 予想通り下痢気味だが、それ程の量ではない。ここにきて、下痢止めが効いてきたということだろう。それからしばらくして2回目のトイレに行き、その後はお腹の調子を取り戻してきた。


 17:00 夕食時には食欲を取り戻していた。motor cycle hill
メニューはコーンポタージュスープとミートソースを挟んだブリトーだ。なかなか美味しい夕食が続いている。




Circle RainbowCircle Rainbow

6/7/2014 Camp 2-Motorcycle hill camp(標高3,400m)


 4:00 起床。今日は、一昨日埋めたcacheを取りに戻る日だ。朝飯は帰ってから食べることにして、Hot waterのみが支給された。ティーバックで紅茶にする。
 6:00 Camp 2を出発した。空身で下るだけなので、30分後にはcache pointについた。天気も良く、少しゆっくりしてからキャンプへ戻る。帰りは2時間をかけて登った。

 10:15 今日はもう移動の用事はない。ゆっくり過ごす日の朝食だ。パンケーキmixにクランベリーソースを混ぜて、クランベリーパンケーキを焼いた。たわいのないおしゃべりが続く。
 デナリはスプーンとボールがあれば登れる。各キャンプでは、下る人が登る人に食料を配りまくるので、食料は持っていく必要がない。(運が良ければ、そうですね)

 食事の後は、昼寝タイムとなった。
 16:00 Camp 2より上は、スノーシューは使わない。この日は、夕方からアイゼンとピッケルの講義となった。直登、斜行、滑落停止等、基本的な訓練をした。中身は基本的だが、こういう時間は事故の防止に大事だと思う。

inner of kitchen tentkitchen tent内部 18:15 キッチンテントに集まり、夕食の準備を進める間に、顔周りの防寒対策のチェックをした。フェイスマスクとゴーグルをして、サイズは適正か?隙間はないか?曇りがおきないか?を確認する。それからバラクラバの口のあたりの穴の大きさを確認し、口のあたりにネットがある場合はハサミで切り落とす。バラクラバを外さずに、携帯食や水が食べられるようにしておくのだ。


 今日の夕食は、グリンピースのスープから始まった。NickNick
私はMSRの折りたたみ式先割れスプーンを使っているのだが、スープを飲むのにはいまいち適してない。ボールに押しつけて汁をすくう時に油断をすると、スプーンの折りたたみが発動して、突然スプーンが折れて汁をまき散らす。実に恐ろしい仕掛けだ。
 夕食のメインディシュはチキンソテーのチーズかけとマッシュポテト、ミックスベジタブルだ。基本、夕食はお代りを狙って食べている。そして、今日もお代りができた。

 20:50 明日はcamp 3までの間のcache pointまで荷物を運ぶ。早寝早起きの生活が続く。
 夕食後は、ランチの食料袋の整理をした。約一週間が過ぎ、二週目に突入する。ランチのペースを考え、今週用で余りそうなランチ食料の内、おいしいものを翌週用の袋に詰め直した。3週目用のランチは明日、cacheに運ぶ。1週目用は、明後日にこのcamp 2に埋めて、帰りにピックアップして、町に持ち帰る。

食堂テント

6/8/2014 Camp 2-Motorcycle hill camp(標高3,400m)



 5:00 起床。朝食はオートミール。紅茶はうまい。
 これまで、シャワーを浴びてない。これからもシャワーの予定はない。そろそろみな臭くなっているころだろうか。みんながそうなので、わからない。自分の臭いを嗅ぐ時は、肘をかぐといいそうだ。手ではわからないとのこと。


 7:00 Camp 2を出発。これまでにないしっかりした斜度の坂を、ジグザグに登る。隠れたクレバスがあちこちにあり、気を緩めると落ちる。
 この日、この坂で、JoeとRonの二人が続けてクレバスに落ちた。腰くらいまで沈んだだけなので、脱出に特別のツールは要らなかったが、5分くらい奮闘して抜け出した。クレバスの深さ自体は、15m位あったらしい。
 キャンプから1.5時間で Motorcycle hillの上に出た。軽く休んで、直ぐに出発する。



ルートはそこから右に曲がり、急坂をトラバースした後で、Windy cornerWindy corner
今度は急坂を直登し、Squirrel pointと呼ばれる岩の上に出る。ルートは約1.5時間。非常にicyで怖いところだと本に書いてあったが、私の感じだと、斜度はきついがアイゼンは良く噛み、怖さは感じなかった。
 そこから広い平原を大きく横切り、そして登っていく。Windy cornerと呼ばれる強風地帯だ。しかし今日は風はなく、かすかな雪と高い湿度で大変暑い。

 11:45 windy cornerの坂をほぼ登りきったところで再度休憩をとった。ここからしばらく west buttressの稜線の下にそって歩く。自然落石の可能性があるので、ヘルメットをして歩く。

cache point 12:55 cache pointに着いた。直ぐに穴を掘り、荷物を置いて戻る。途中、平らな所で私の左右のアイゼンが引っかかりこけた。気が緩むと、左右の足の距離が短くなるようだ。注意せねば。

 15:00 camp 2に戻った。ひと眠りをしてから SPO2を測る。93/60。悪くない
 16:00 夕食はポテトとねぎのクリームスープ、チーズペンネだ。
 嵐が近付いているらしい。明後日からしばらくは天気が悪いそうだ。明日、camp 3に移動したら、しばらくは動けないかもしれない。
食事の後、camp 2に残す食料、スノーシューズ、ストックの片方を、テントの近くに埋めた。
 19:00 テントでリラックスだ。かなり暑い。外は、少し湿った雪が降っている。4-5mmくらいだろうか

Squirrel hillSquirrel hill

6/9/2014 Camp 2-Motorcycle hill camp(標高3,400m)



 4:20 起床。4時に起きるはずだった。寝坊だ。JoeとRonをたたき起こして、それから急いで支度をする。一通り終わってからSPO2を測ると、89/90だった。少し呼吸を整えて測り直し、89/70になった。

 8:00 寝坊はあったがキャッチアップして、予定時間にcampを出発した。今日の荷物は激重い。そして急坂が続く。まさにBig dayだ。

Squirrel hill 昨晩からの雪が続いている。そして、風も吹いてきた。途中、クレバスに落ちることはなかったが、吹雪が視界を奪って遠くが見えない。特にソフトな雪に慣れてないメンバーは、段差がある所で足元のステップが崩れて、なかなか前に進まない。


 Squirrel pointの下の急坂で、向かい風が速度を増した。Squirrel hillRonとSquirrel hill
 そしてRonが止まってしまった。疲れと寒さと風でくじけてしまったのだ。
 隊の皆で、Ronを叱咤する。Go! Stand-up! Ron!
 そしてRonは少し登り、また止まる。結局、坂の途中で長い休みをとることにした。
 その休みの後、Ronはゆっくりだが進めるようになった。
 10:40 Squirrel pointの上にでて、再度大休止をとった。

 13:30 私は、windy cornerの上に出るころには、重たい荷物を担ぎながら、そりを引っ張る時の足さばきのこつのようなものを感じ始めていた。なんとなく調子がいいのだ。

west buttressの稜線の下 しかしその調子もここまでだった。しばらくして、west buttressの稜線の下に出るとすぐ、私が引くそりの上下がひっくり返った。
 長いトラバースを横切って進むので、常に右に傾いている場所であり、重心が高いとそりが横転しやすい。また稜線から落ちてくる落石と雪崩の危険性が高いので、ノンストップで駆け抜ける場所だ。皆、ロープで繋がっている中、誰も止まるわけにはいかない。

 私のそりを直している時間は無い。しかし、そりの上下がひっくり返ると、雪面との摩擦で重さが二倍増しの荷物を引くことになる。
 力技でそりを引くしかないが、進まない。それでも、無理をして、勢いをつけて進んだ。直ぐに息が上がり、心臓がばくばくする。これはとても高所の運動ではない。

 14:30 昨日のcache pointまでついた。ここまできたら落石の危険はない。一旦止まって休憩だ。私はそりの上下を戻して休んだが、心臓のバクバクは止まらない。このバクバクは、camp 3まで続いた。


 camp 3は14k camp(14,000feetの高さにある)やBasin camp(盆地)とも言われ、Denali最大のキャンプ場だ。パークレンジャーもテント村を作り、医師も常駐している。雪崩やクレバスの危険も低く、また天候が穏やかな地形になっている。

 我々がcamp 3につくと、やはりテントでいっぱいだった。camp 3camp 3
軽い吹雪の中、我々もテントの設営を始める。地ならしや穴掘りとスコップの作業が続く。体の芯まで冷えた。Joeは力作業の時はふらふらして頼りにならない。

 サブガイドのDustinがキッチンテントを掘り始めたが、なにやらぶつぶつ言っている。彼は海兵隊あがりで行動はきびきびしているが、ちょっとやばそうなところもある。この日はスコップに悪態をついて、むやみに雪を叩き、吠え始めた。正直、何を言っているのかわからないので放っておいた。やがて、彼は落ちついた。それからしばらくして皆で集まりキッチンテントの屋根を張った。

 夕食はインスタントラーメン。私は日本から持って行ったチューブ入りニンニクを入れた。味もいいし、暖かさ2倍だ!
 今日は皆、疲れているので、明日の起きる時間を決めないで、寝ることにした。

 23:00 寝袋に入る。今日は寒い。外は-20℃くらいか。これから更に冷えるだろう。寝袋にダウンジャケットをかけて寝る。SPO2は76/70。%が低いが、パルスが落ち着いているから大丈夫だろう。

 大変だった今日を思い出す。Denaliを歩くには、Rest step(休める歩き方)とKick step(足元を安定させる蹴りこみ)が必須だ。この二つを知らなかったらここまで来れていないだろう。