Diary of 5/31-
Jungle March

papua jungle

  

1/6/2015-1/8/2015 @Punta Arenas, Chile



 南極へは、チリの南の果ての町であるPunta Arenasから、航空便で飛ぶ。

 私は日本から、Air Canadaを乗り継いでチリへ移動したが、度重なる出発の遅れで、2回も乗り継ぎ便の変更を余儀なくされ、あまり快適な旅ではなかった。
 結局、Punta Arenasに着いたときには、日本を出発してから43時間も経っていた。

 しかし、何度も便を変更したにも関わらず、心配していたロストバゲージになっていなかったのは、幸運だと思う。

punta arenas night 緯度が高いPunta Arenasでは、短い夏の間、夜の11時ごろまで日がさしている。
 しかし寒々しい光の中で、町は閑散としていた。ラテンの国の夜とは程遠いイメージだ。

 そして、この町と南極との間には、世界で最も荒れる海峡と言われているDrake海峡が横たわっている。日本で言えば、津軽海峡への入り口の町。


そこへ飛行機で飛ぶんだから、Punta Arenasはチリの竜飛岬みたいなものか。
なんかうら悲しい。そんな第一印象だった。
 

 昼間に歩いてみると、この町はとても落ち着いた雰囲気がある。punta arenas street
ラテンだけど真面目でシャイと言われてるチリ人。植木が、丁寧に刈り込まれているのもお国柄だろうか。

1/9/2015 @Punta Arenas, Chile



6:00 朝早く、ホテルまでバスが迎えにきた。幾つかのホテルを回って、同じ南極行きの便に乗るメンバーを集め、空港へ向う。

 空港のゲートでバスを降りて、セキュリティーを通る。そしてまた同じバスに乗り込み、飛行機のタラップまで送られた。
 セキュリティーに行く前に、大きめの手荷物はバスに残して行ったので、セキュリティーの意味は全く無かったのだが。。。それでもルールだからやっているのだろうか。

Il-76 insideイリューシン機内8:00 飛行機はロシアの軍用機イリューシン76、大型ジェット輸送機である。もともとシベリアや北極の厳しい天候と氷の滑走路を想定して設計された機体は、南極にもぴったりである。

 しかし、旅客機としては、あまりに高い天井なので、サイズが大きいのに、人数は50人も乗れない。
 エンジン音も異様に大きく、最初に耳栓が配られ、会話は難しい。
 そして窓は無いのに等しいくらい小さく、少なく、まるで役に立ってない。このフライトでは、窓の代わりに外部カメラを使い、客席前方のスクリーンへ外の風景の投影がされていた。


 4時間半のフライトで、南極の基地があるUnion Gracierまで飛行する。union gracierUnion Gracier

 そこはVinsonへの登山者以外にも、南極点への旅行者や南極をスキーで横断する冒険者、調査にきた科学者等も含めて、個人レベルで南極での活動をする人の為の国際基地となっているところだ。

 Union Gracierの基地は、南極点から、南米方向寄りに約1,000kmの地点にある。南極大陸は約2,000kmの円のサイズだから、ざっくり言うと中心と端の真ん中の地点となる。


Il 76 イリューシン76 12:30 飛行機が着陸した。タイヤが地面に接触する軽いショックの後で、
平らな氷河の上を機体が滑り続けた。想定はしていたが、思っていたより長い時間だ。止まるまで、2分近くはかかっただろうか。

 気温が上がってくると、摩擦熱で氷が溶けやすくなるので、ますます止まらなくなり、ついには着陸ができなくなってしまうそうだ。


 飛行機からUnion Gracierの基地までは大型の4WDでセスナ20分ほどの移動だった。そこでランチをとると直ぐに、今度はセスナ機に乗ってVinsonのBase campまで移動する。約40分のフライトだ。


 セスナ機からは、南極の景色が良く見えた。平らに広がる白い大地に、ところどころで黒いピラミッドのように山々がそそり立っている。氷河で滑らかに削られた山肌は、鏡のように光っていた。

VBCBase Camp Vinson base campは、Vinsonの山の麓に伸びるBranscomb氷河の上にあり、高台に広がる台地上にある。標高は2,100mで、晴れているとVinsonの頂上が良く見えた。

 このbase campへの移動以降は、Team単位での活動が主になる。私はANIというオペレーターのグループに参加していたが、そのメンバーの中でも、日本人の池田さんと中国人のJeffという二人の登山者と、イギリス人のアンディというガイドの4人でチームを組んだ。私以外にも日本人が参加している事は、Punta Arenasに来るまで知らなかった。池田さんは外科医なので心強い。

 テントは池田さんと二人で共用である。この一年間に5回の高所登山をやってきたが、初めて日本人と同じチームになることができた。


19:30  ディナーは豚のソテーと野菜焼き、蒸かしポテトだが、porkワインがついた。食堂も快適だし、Goodだ。

22:00 寝袋に入る。ここは白夜というか、一日中、太陽が出ているので、アイマスクは必需品だ。顔の防寒にもなる。

1/10/2015 @Vinson Base Camp



VBC morningBase camp9:00 朝起きると、気温は-17度だった。風が無く、日が照り付けているので、比較的、暖かく感じる。

 朝食は、グラノーラにナッツを足したものと、ベーコンエッグだ。アメリカ系のオペレーターなので、用意された食事はアメリカ風だった。


 食事の後に、便の処理について説明があった。このBase campには、toilet素晴らしいトイレ
開放感に溢れた素晴らしいトイレがある。

 しかし、登山に出かけたら、決められた場所で便をして、各個人がビニール袋で必ず持ち帰らなければならない。また小便に関しても、決められたピーホール以外ではしてはならない。
 南極に関しては、環境団体のグループが厳しい目を光らせており、来年以降の登山活動のpermissionに影響するので、特に厳格に守る必要があるということだった。

 袋に大便をするやり方の場合、小と大を分けてする技術が必要となる。先にピーホールに小をして、それからビニール袋へ大をする。つまり、持ち帰るビニールの中身を重くしない工夫だ。しかしこれはこれで、なかなか技術がいるのだ。

view from toiletトイレからの景色

13:30 トレーニングで裏山に登る。2,800mの小ピークまで、標高差700mを二時間かけて登り、頂上で順応のために30分ほど休んだ。
 少しきつめのペースの登りだ。良い天気で暑くなる。
 一時間でBase campへ下り、その後はテントでくつろぐ。

サーモン 夕食はサーモンソテーだった。味もokだ。安ワインだが、ワインがつくのはうれしい。

1/11/2015 @Vinson Base Camp



8:30 起床。暖かい夜だった。寝袋は-29度対応で少し暑く、下着一枚で寝た。
 パンケーキとベーコンの朝食。温かい朝食はうれしい。

 今日はbase campの次のcampとなるLow campへ出発する。Low campは谷間にあり、太陽が山の陰に入る時間が長いので、午前中は極寒の地となる。そこでbase campからの出発を午後の時間に設定し、比較的暖かい時間に着くようにした。

 Low campの後、Vinsonの山頂までには、もう一つHigh campを張る。こちらはlow campより1,000mほど標高が高いが、日陰にならない分暖かい。
 

sledそりのシステム 午前中は荷造りをした。背負うバックパックと、そりに乗せるダッフルバックに荷物を分け、それからそりをバックパックと繋ぐセッティングをした。

 そりの設定は、デナリの時と同じだ。そりのシステムや、Fixed Ropeのシステム等、Vinsonの登山はデナリの登山と類似点が多いため、ミニデナリと呼ぶ人もいる。

 ランチは、ブロッコリのチーズ炒めとソーセージだった。ブロッコリはゼロカロリーだから山向きではないんだよねと、誰かが言っていた。
 


13:30 Base campを出発した。ゆっくりした坂を、そりを引きながらVBC to low campBase campを振返る
登っていく。アイゼンは使わない。


 Visonの頂上の方向に向かって、まっすぐ、約二時間歩く。2,100mから2,600mまで標高が上がると、高い壁にぶつかり、道は左方向へ90度曲がっていく。

Vbc to low camp 2カーブからLow campへ向う この左曲がりのカーブの坂は急だが、それほど長くない。カーブが終わるとそこから、ほぼ平らに見える道がまっすぐ続いている。この道は、左右を稜線が走る谷間にのびており、どんつきがLow campだ。


正面のLow campの遥か上には南極第二の高峰であるMt.Tyreeが見え、ice fallアイスフォール
斜め右には第三の高峰のMt.Shinnが見える。そして右の壁には、アイスフォールがある。

 谷間は日が照り付けてとても暑いが、ここまで順調に進んできた。
この日のルートは、デナリのSki hillsのようなコースと言われているが、Ski hillsより楽ではないか。
 
 
17:30 カーブからlow campまでは約2時間、base campからの通算では4時間。ゆっくり歩いてLow campに到着した。標高は2,750mだ。

LC kitchen tentキッチンテント 直ぐにテントを張り、荷物を整理した。ここには、ANIチームの常設のキッチンテントがある。巨大なテントの中には、hibachi style(火鉢)のキッチン設備と雪のベンチがあった。




 アンディーがやってきて、天気予報を伝えてくれた。明日は天気がいいが、明後日は風が強くなる。

 皆調子がいいので、明日はHigh campまで登ってしまおうということになった。
 チャンスに攻めるのは大歓迎だ。ここら辺のストラテジーは、チームによって変わってくる。自分の考えと合っていると、気分が乗ってくる。
 
 

20:30 遅めの夕食だ。フェットチーネのパスタ、チキンとパスタ
マッシュルームのクリームソースがけ。味がぼんやりしてるので塩とタバスコを足した。

 このキャンプでは、夜三時からは日が山に隠れて極寒になる。-40度くらいだそうだ。寒さを避けるため、明日は12時ごろに起きてから朝食となる。


 
 
22:00 寝袋に入る。防寒対策で、寝袋には乾いた服を軽く詰めて、ダウンの上着を布団のように掛けた。パルスオキシメーターは、90%/75bpm。脈も落ち着いているし、問題はなさそうだ。

 kindleで長編小説を読む。2時間くらいのはずが、既に真夜中の3時になっていた。急に、冷気が寝袋の中にしみこんでくる。しっかり、寝袋の口を閉めなおして寝た。時々、寒さで起きたが、なんとか寝れた。5時くらいが一番寒かったか。-40度は伊達じゃない。