fall of sherpa

5/19 @C2



 C2では、シェルパが皆、外に出て、ローツェフェイスの方を見ていた。我々の隊も、他の隊も。何をしているのか。。。

 シェルパがローツェフェイスから落ちたらしい。そのレスキューを見ていたのだ。

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Lotseface
 ローツェフェイスを直登すると、Camp 3やクーロワールを通過し、ローツェの頂上につながっている。そのシェルパは、ルート工作のためにロープをかけていて、頂上直下からローツェフェイスの底まで、落ちたのだ。

 標高差で2,000mの氷の滑り台だ。下に落ちた時には、バラバラだったそうだ。この場合のレスキューとは、遺体を集めて一つの袋に入れることだ。


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 なぜ落ちたのか... 衝撃の理由だった。

 このシェルパは、ローツェ・クローワールにロープを張っていた。普通にロープを張ればいいのだが、このシェルパは、古いロープが残っているところは、張りなおさず、そのままそれを使っていたのだ。そして、自分が使った古いロープが切れて落ちた。
 この二年間は雪崩とセラックの事故で、ローツェは登られてない。残っているロープは最低でも三年間は経っているということだ。一冬を越したロープだって、いつ切れてもおかしくない。

Lotse
 なぜ古いロープを使ったのか?

 新しいロープを節約したかったのか。工作の時間を節約したかったのか?
 自分の目利きに自信があったのか、誰かからの指示か?
 古いロープの危険性に無知ということはないだろうが... そこはわからない。

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 このシェルパは、アラントレックがアレンジをしているインディアンアーミー隊に所属していた。

 ルート工作は、いろいろな隊が分担をして、工作をする。C1~C2とか、C2~C3とか、そういう分担の感じだ。我々の隊やIMG等、経験があるシェルパの隊が難しい所を担当する。
 そして、工作をしない隊は費用を分担する。多少の使用料を払うのだ。そして、それは工作をした隊に入ってくる。金額は、全然割に合わないくらい安いのだが。
 費用をぎりぎりでやっている隊は、少しでも払いをなくすために、自分の隊のシェルパを手伝いに出したりする。はっきり言って足手まといのケースが多いのだが、それでも荷物運びとかには使える。

 この分担は、キャンプの初期にやるオペレーターたちの連絡会議で決めるのだが、今回は、インディアンアーミー隊が自分から手を挙げて、ローツェ工作を担当したそうだ。
 もちろん、彼らの隊が工作の経験が浅いのは、皆わかっていた。
 しかし、良くも悪くも、平等主義の会議。古株や大手はいるが、誰がリーダーということはない。強い意見は通るのだ。

 そして、遅れに遅れた工作。多少の覚悟はしていたが、予想を超えていた遅れだった。ヘルプの声をあげてもよかっただろう。そして、古いロープの使用。
 この結果に、隊としての責任は大きい。

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 そして、そんな隊に対して、監督し、必要なヘルプを提供するためのリーダーシップや機構がないと、この様な事故はまた起きるだろう。ラッセルには、来年の問題だねと話した。



 さてローツェ登山だが、これでクローワールのロープは使えなくなった。どこが切れるかわからないロープは、すべて使えないのだ。